原因とリスクファクター
2、3日歯磨きをさぼると、歯の表面にうす黄色っぽい食べかすのようなものが溜まってきます。これを歯垢と言います。
歯周病の原因はこの歯垢です。
さて、歯垢とは何だと思いますか?
白っぽいので「食べかす」と思っている人が多いようですが、実は歯垢はバイキンなのです。
人間に限らず動物の口の中には細菌が住み着いています(口腔常在菌)が、人間の場合、食べ物の関係からそのバイキンが毎日増え続けます。
その増えたバイキンの塊のことを歯垢と言います。
通常、バイキンは小さいため顕微鏡でしか見ることが出来ませんが、その小さいバイキンが目に見えるぐらい増えるわけですから、いかにすさまじい量のバイキンか想像がつくでしょう。
耳かき1杯で約一億匹と言われています。
歯垢のことを別名プラークと言ったり、あるいはバイオフィルムと言ったりしますが、とにかくその正体はバイキンなのです。
約300種類のバイキンがいると言われていますが、その中のいくつかの細菌がむし歯や歯周病の原因となっています。
歯周病に関係するとされる口腔内細菌は十数種類あるとされていますが、特に
Porphyromonas gingibalis(P.g)
Actinobacillus actinomycetemcomitans(A.a)
Bacteroides forsyehus(B.f)
の3種のグラム陰性嫌気性桿菌が主な歯周病菌といわれています。
歯周病の直接的な原因は口の中の細菌で、歯垢(プラーク)の中に潜んでいます。歯の表面に生息するう蝕菌と違い、歯周病菌は空気が嫌気性菌で、歯と歯肉のすき間(歯周ポケット)に生息しています。この歯垢が唾液中のリン酸カルシウムによって硬く石灰化したものが歯石です。
歯周病菌を抱えたまま固くなった歯石は、表面がザラザラしているので歯肉を傷つけ、また表面にはプラークがたまりやすくなります。
歯石は固く歯の表面にこびりつき、歯ブラシなどでは容易にはとれません。歯科医院で専門家に取ってもらいましょう。
歯周病に影響する局所(口腔)のいくつかの危険因子があります。
・歯並びが悪いとプラークがたまりやすくなります。
・口の中のことに関心が薄いと手入れがおろそかになります。
・やわらかく甘いものばかり食べているとプラークができやすくなります。
・歯ぎしりや咬み合わせの悪さは歯周組織に負担をかけます。
・口で呼吸するくせ(口呼吸)により歯肉が乾燥し、炎症が強くなります。
・歯を抜いたままにして咬み合わせがなくなるとプラークができやすくなります。
・食片圧入(食べ物が歯の間につまる)は歯周組織を傷つけ炎症を強くします。
・適合不良の補綴物があるとプラークが溜まりやすくなります。
歯周病は30歳代後半から多いといわれていますが、誰でもなるわけではなく、歯周病をひきおこす要因を持っている人がなりやすいのです。
・タバコは歯周病最悪の危険因子です。
・糖尿病や血液疾患は身体の抵抗力を低下させ歯周病を悪くします。
・肥満も危険因子の一つであることが最近わかってきました。
・女性の思春期、妊娠、更年期では女性ホルモンの影響で歯周病を悪化することがあります。
・不摂生な生活やストレスは身体の抵抗力を低下させ歯周病を悪くします。
・老化とそれに伴う骨粗鬆症は歯周病を悪くします。
・薬の副作用として歯周病が悪化することがあります。
喫煙者は歯周病にかかりやすく、またそれが重症化しやすいと言われています。
プラークの付着量には変化がないので、歯周組織の抵抗力に影響するのです。これは、口腔の免疫力を弱め、また免疫細胞が本来細菌の分解に使用する酵素を過剰に活性化し自分の歯周組織を傷つけるのです。さらにタバコは傷の治癒も遅くします。
■少し詳しいしくみ
喫煙の害を引き起こす物質には、ニコチン、アクロレイン、シアン化合物、タール、一酸化炭素などがあります。喫煙によりIgAなどの唾液中の抗体が減少し、好中球やリンパ球(T細胞)の機能が阻害されます。歯周組織の治癒の抑制は線維芽細胞や上皮細胞の機能抑制によりおこります。
喫煙は歯周病のもっとも大きな危険因子といわれています。喫煙のため免疫機能が低下してゆくことが解ってきました。また歯周病治療の予後が悪いもののうち90%以上が喫煙者であったという報告もあります。
菊池地域で歯周疾患にかかる危険性を調べたところ、たばこを「吸っている」人は、「吸わない」人に比べて、歯周炎(歯周ポケット4~5mm及び6mm以上)になる割合が、年齢、性別、歯磨き回数で調整した値で 2.4倍であることがわかりました(有意水準0.1%)。
歯周病菌は人から人へ感染します。そのうち家族間での感染が最も多く、夫婦間での感染は25~33%と言われています。しかし、不幸にして歯周病菌に感染したとしても歯周病を完全に治療し、その後の定期的なメインテナンスを受けることで、他人に感染させる確立をかなり低くすることができると言われています。