歯周病ってどんな病気?
平成11年に行われた厚生労働省の歯科疾患実態調査によると、40歳代あたりから次第に歯が無くなり始め、80歳代ではほとんどの歯が無くなっています。これを見ると「年をとると歯は無くなるもの」だとつい考えがちなのですが、実は加齢と歯の喪失とはまったく関係がありません。
私たちが歯を無くすのは加齢ではなく、あくまで病気のせいです。
私たちが歯を失う原因のほとんどが虫歯と歯周病ですが、特に中年以降は歯周病がそのトップバッターになってきます。
歯は長い根っこを持っていますが、それを支えてるのが顎の骨です。
ちょうど樹が地中に根っこを張っていたり、クイがコンクリートに埋まったような構造をしています。
少し硬いものを噛むだけでも私たちの歯には20~30Kgの力がかかりますが、そのような強い力に耐えられるのもこのような構造になっているおかげです。
ところが、その歯を支えていた骨が溶けてしまったらどうなるでしょう?
当然、歯は支えるものが無くなり、グラグラになって抜け落ちてしまいます。
歯周組織の炎症により歯と歯肉の境目の歯肉溝(0.5~2mm)が病的に深くなったものを歯周ポケットと呼びます。
ポケット内は嫌気性菌である歯周病菌が生息しやすい環境で、プラークが付着、増加しやすくなります。このため、周りの組織がより深く破壊されポケットがさらに深くなるようになります。
歯肉炎では歯槽骨は無事でも、歯肉が腫れて歯肉溝が深くなり、これを仮性ポケットと呼びます。歯槽骨が破壊され始めると歯周炎といい、真性の歯周ポケットと呼ばれ、軽度歯周炎で3~5mm、中等度4~7mm、重度では6mm以上となります。
歯槽骨の破壊にともない歯はぐらつき、歯根の長さの半分以上に歯が吸収された重度歯周炎では自然に抜けることもあります。
歯周病に関係するとされる口腔内細菌は十数種類あるとされていますが、特に
Porphyromanas gingivalis(P.g.)
Actinobacillus actinomycetemcomitans(A.a.)
Bacteroides forsyehus(B.f.)
この3種のグラム陰性嫌気性桿菌が主な歯周病菌といわれています。
これらの細菌が原因で歯周組織が破壊されるのです。
歯周病は歯肉炎と歯周炎に大きく分けれられます。歯肉炎は歯周炎のはじまりで、歯肉に限局して炎症が起こっています。歯肉溝と言われる歯と歯肉の境目の溝から歯周病菌が侵入して炎症がおこります。血管の拡張、うっ血が起こるために歯肉が赤く腫れたり出血しやすくなったりします。
歯肉炎では歯を支える歯槽骨に骨の破壊吸収が見られない点が歯周炎と大きく異なります。
歯周病菌が歯肉溝に進入してくると、私たちの体はこれを撃退しようとします。
まず白血球が集まってきて菌を食べてやっつけます。またコラゲナーゼ、エラスターゼなどの酵素を出し菌を攻撃します。しかしこの酵素が歯肉の中にあるコラーゲン繊維(歯を支えている歯肉靭帯)までも壊してしまいます。これにより歯肉の炎症、破壊が進むのです。
歯周病が進んでくると歯周細菌はさらに奥に侵入してきます。歯周病菌が出す毒素により歯槽骨が破壊されます。またリンパ球、マクロファージなどの免疫細胞は、歯槽骨に炎症が広がるのを防ぐため破骨細胞活性化因子を出して歯槽骨を破壊、吸収することにより炎症部から骨を遠ざけます。これにより歯槽骨への炎症の波及を防ごうとするのです。
特に、痛くて腫れている時(急性期)には骨の破壊吸収がより進みます。
原因の異なるいろいろな種類の口臭があります。
歯周病もその原因の一つです。
・病的口臭
口の中の病気(歯周病、う蝕)、消化管の病気、糖尿病、鼻や呼吸器の病気が原因になることがあります。
・生理的口臭
朝起きたときや空腹時に感じる臭いです。
・ストレスによる口臭
ストレスにより唾液の量が少なくなると口の中がくさくなります。
・飲食物による口臭
ニンニク、ネギなどのにおいの強い食べ物によりおこります。
・心理的口臭
自分自身で強い口臭であると思いこむ人がいます。